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残された学徒隊の遺書

2010年05月16日

Posted by 砂川よしひろ at 06:36 │Comments( 0 ) 養秀同窓会
 多くの勤皇隊員・通信隊員は昭和の初めこの世に生を受け、小学校の時に日中戦争(1937年・昭和12)、中学校のときに太平洋戦争(1941年・昭和16)を経て敗戦(1945年・昭和20)を経験した昭和一桁の世代である。
 その間に皇民化教育・戦時教育を受け、國のためなら死を恐れない人間に育てられた。その彼等が、1945年年5月に分散配属される前に、両親に宛てにしたためた最後の死を覚悟した決別の手紙が遺書として残っている。
 戦後、豊見城村保栄茂(びん)の壕から発掘されたが、2年の歳月の間に地下水に侵され腐食し判読不能になったものが多かったが、判読できるものは生存者・遺族に返還された。判読できないものは一中学徒隊資料展示室に保管されている。


 いずれの手紙も誰かに強制されて書かされたものとは思えない。また軍の検閲も受けてない本人の正直な最後の悲しい親・家族との別れの手紙である。いずれもほぼ原文のまま。

 今回「会報」掲載する「遺書」は、紙面の都合により一中学徒隊資料展示室に保管されている手紙等の一部だが、御一読され、ぜひ養秀会館内の「一中学徒資料展示室」に足を運んでいただきたい。
 (月~金・10時~17時・入場無料)



 謹んで母上に
    独立工兵第六六大隊
    五年 小波津 昇

 謹んで母上に、平和な島沖縄もすでに戦ひの巷と化せり、小生も鉄血勤皇隊員として皇國の兵士となり十九才で出征、ここに遺書をしたたむ。小生運悪くして散るとも魂は死なず、きっと勝つ戦ひは我が國の興亡に関する天下分け目の戦ひなり。なにも思い残すことなく、父と共に暮らす、後は母上を始め小波津家の発展を祈る。小生も決死敢闘悔なし。
『若櫻散るべき時は今なるぞ十九の春に撃ちして止まむ』


 ご両親様
    独立重砲兵第一〇〇大隊
    四年 小渡 壮一

 ご両親様 どうか顕在であって下さい。私も鉄血勤皇隊に入り、よくやって呉れたと思はれて決して嘆く様なことはしないで下さい。父上も病気を一日も早く恢復されて再起奉公されて下さい。私もその事を御祈り致します。母上も父上を激励されて恢復させて下さい。
 最後に御両親様の御健康と御発展を祈ります。さやうなら
『身はたとい此沖縄に果つるとも七度生まれて敵亡さむ』
『親思ふ心にまさむ親心今日のおとづれ何ときくらむ』


 謹んで父母上様に
    独立銃砲兵第一〇〇大隊
    三年 安谷屋 盛治

 謹んで父母上様に呈す!
 戦局苛烈になった沖縄、空襲、艦砲射撃、砲弾で一杯です。敵を撃たずば止まぬという心で自分等は一杯です。自分は家族の生死はどっちか分かりません。父は国頭に行かれましたが、母も読谷山の方へ帰ってきたと言っていましたが、又国頭の方へ行かれましたでしょうね。とにかく祖父母様、弟、妹皆元気でしょうね。元気と思っておく。米兵を撃って撃って撃ちまくって、一日も早く大東亜共栄圏確立に邁進しようと思って居ます。
 今年で敵さんの顔を見ることが出来ます。自分は一人でも多く敵をやっつけてから死のうと思って居ます。大君の御為に命を捧げて戦います。自分が死んで後も永久に日本の國は栄えますでしょう。十八才で二等兵となり入隊しました。人生十八年、自分は喜んで散って行きます。
 安心して、弟盛夫さんは立派な軍人になして下さい。お母さんにお願いします。妹幸子さんは立派な日本の女性になして下さい。
『大君の御旗の下に死してこそ人と生まれし甲斐はありけり』
『君のため何かをしなむ若櫻散って甲斐ある命なりせば』


 母上様
   電信第三六連隊
   二年三組 渡久山朝雄

 永らく御無沙汰致し済みません。お母さんも、お祖母さんも、お姉さんもお元気の事と推察致します。私も元気で本分に邁進して居ます。
 首里市は、空襲も艦砲射撃もまだ受ません。こちらは大丈夫です。読谷方面はどうですか。敵の艦砲射撃も空襲もだんだん激しくなる筈ですが、お母さん達はなるべく國頭へ疎開した方がよいと思ひます。お祖母さんの事は呉々もよろしくお願ひ致します。私も愈々球部隊の通信兵としてお役に立ちますことの出来る事を身を光榮と存じ、深く感謝致して居ます。
 若しもの事があったとしても、けして見苦しい死に方は、しないつもりです。日本男児として男らしく死にます。
 もう時間がありませんので、くれぐれも御身を大事に私の事は少しも気に掛けないで下さい。では、さようなら。 三月二十五日 九時四〇分




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